女気を学んだアルバイト essay7
・・・ふとした出来事で、のちのちの自分の思想や観念まで変えられたことってありませんか?(近頃newsで「同性婚」が物議を醸してますね、それでふと思い出しました。)
昔、名古屋の服飾専門学校に通っていたころ、「ファッションショーの着替えを手伝うバイトしたい人〜!」という先生に、私含め数人が手を挙げた。動きやすい服装を、ということで、全員髪は束ね、Tシャツにジーンズ。指定の日に待ち合わせると、向かう場所は本山(東京でいうと広尾なエリアかな)の一軒家の素敵なアトリエだった。2階に行くと所狭しとラックに並んだ毛皮・けがわ・ケガワ・・・そう、毛皮がメインのファッションショーだったんです。値段を見てまたびっくり!!ウン百万のものがわっさわっさ。。。「こんな高価なものを私たちが着替えさせていいの・・・?」不安な私たちにスタイリストさんたちが説明を始める。「モデルさん別にラックに掛かってるから、着る順番の番号札見て渡してあげて。着せる順番も考えてね、ボタンなど、あらかじめ外せるものは外してあげてください」・・・はぁ。。。「じゃ担当のモデルの名前言いますから覚えてね、小嶋さんはジョディ、●●さんはアサミ、▲▲さんは・・・」え、日本人じゃないの?・・・と戸惑っている頃、どうやらモデルさん達が到着したらしい。階段をキャッキャと上ってくる、はしゃいだ声が、、、妙に低い・・・・あれ、、、あれ〜〜
なんと十数名のうち半数のモデルがニューハーフだったんです!当時まだニューハーフとか、もちろんカミングアウトなんて言葉は世の中に普及しておらず・・・しかも、美しい!かわいい!誰がニューハーフか判別できない!・・・まだいたいけな十代の私達はしばらくボーゼンと立ち尽くしていました(笑)
しかし、目の前にいるのはマネキンみたいに細い、モデル達以外の何者でもなかった。(ちょっとガタイのいい方もいたんですけど、でも物腰が女性なんです)「あなた、ちょっと足綺麗になったんじゃない?」「そう?あなただって肌のツヤ、うらやまし〜」「聞いて〜!私胸が大きくなったと思わない?ちょっと入れちゃったの!ウフ♪」「やだ!ほんと、いい感じじゃない〜触らせて〜♪」「いいなぁ〜私も欲しい〜」「今日のランジェリーかわいいのよ〜見る?」「見せて〜、でも、私のもかわいいのよ♪」「かわいい〜〜♪」
・・・・・数分が経過したとき、私達がほぼ同時に思って口にした言葉がありました、「でもさぁ、、、女だよね。ここには女しかいない、よね・・・」若さゆえの柔軟さか、、、
そんなこんなで、ばたばたとリハーサルを終え、本番。毛皮をまとい、次々とステージに出ていっては戻り、着替え、そしてまたステージへ、繰り返される着替えに初心者の私達は大わらわ・・・。途中アサミちゃんが、ドレスの裾を両手でつかみながら駆け込んできて「ねぇっ!あたしのパンプスがないのっ!知らない?黒いの!ないのぉっ!」それを聞いた私達は「え゛っ!!黒ね!黒・・・・あ!これ!」机の下の方から取って渡すと「ありがとうぅ!!」といってすぐ履いてステージへ。・・・・→文章だと難しいけど、アサミちゃんはとても女の子らしく探してるのに比べ、私達はジーンズでよいしょっ!としゃがんで、そこら中のシーチング(布)をひっくり返す、その姿は我ながら男らしかった。
自分の担当モデル、ジョディさんには、途中、もたついた時もあって「早くしてちょうだい!」と怒鳴られもし(だってびっしりついてるボタンなかなか外せなくて&留められなくて)でも、一番最後の衣装を着せ終わったジョディさんが、ステージに出る直前に振り返り「ありがとう!よかったわよ!」っと言ってくれたのだ。
やだ〜〜〜しかもかっこよすぎだぜ〜〜〜なんでだよ〜〜・・・
・・・ショーは無事終わり、ちょっと時間があったので私達は迷わず質問した。「あの〜・・・なんでそんなに女らしいんですか?」「あら〜、だってあなた達はこうやっても(普通にコーヒーカップを持って見せた)女でしょ。私達はこうやってやらないと(薬指と小指を立て気味に持って見せた)女じゃないからよ〜」そうか〜・・・なんだか納得。憧れる者と、もともと与えられて持っている者の違い・・・か?それで済まされていいのか・・・・
・・・その後、テレビでニューハーフさんがたくさん出てきて、カミングアウトする人もたくさん出てきましたが、そのたびなんの驚きもなく時代の流れを眺められたのはあのバイトのおかげ。むしろ下品になっていく女の子達の方がよっぽど恐ろしい。そういう私も女らしいというにはほど遠いけど。でもニューハーフ・・・ひとくくりにすると性同一性障害(この言い方、ひどい)への対応というのは国によっても随分違いますね。
私自身は、女で、つきあうのは今のところ男性です。でもひょっとしたら女性ともつきあえるのかもしれない。体験してないからわからない。それに何故自分が男性とつきあいたいと思うのかも説明できないですよね。きっと本能です。それがたまたま組み合わせが違うだけ、にしか思えないんですけどね。それよりも、もっと自分なりの男気・女気を磨くべきなのかも、って気がします。私はジョディさんみたいに凛として、それでいてセクシーな女性に憧れるなぁ。なかなかそういう女性っていないと思う。かえって女性の方が難しいのかな・・・
注:モデルさんの名前は仮名です。忘れてしまったし。(essay7)
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