凶悪犯罪者こそ更生します(新潮新書) 岡本茂樹 読了。
想像通りに良い本でした。
内容紹介は以下の通り。
落ちるところまで落ちた「極悪人」たちが、次々と「心からの反省」を表明。受刑者教育に革命を起こした驚きの授業を初公開!
「反省しない」のではなく「反省できない」。それが凶悪犯罪者たちが収容される刑務所の実情だ。しかし、誰もが「更生不可能」と判断する彼らが、新たな気づきを得た時こそ、更生への意志は圧倒的に強くなる。その「気づき」を得るために有効なのは、犯罪者に「反省を求めない」「加害者視点の」教育である。数多くの累犯受刑者を「本当の反省」に導いた著者だから書けた、超実践的更生メソッド |
・・著者いわく「本当に被害者には申し訳ない事をした」と本気で反省しつづける模範受刑者のほうが仮出所を認められやすくなる、それは当然のようだけど、それだけでは社会復帰を果たしても同じような場面に遭遇したとき、同じ気持が蘇ってしまい再犯を引き起こす可能性がかなり高いと。
(著者の前書が『反省させると犯罪者になります』)
もちろん初犯を防ぐのが一番なのですが。被害者を増やさない為にも、”正しい更生”は重要ですよね。
ではどうしたらよいのか。
”自分のどんな性質がこういった反省をするような事態を招いたのか”を カウンセリングで気づかせる。この本には、更生不可能と言われるLB指標(刑期10年以上・重犯)の受刑者が涙し、心を開いてゆくシーンが書かれています。
そして、そもそも心を開けないような状態にした境遇とは。
ここではほぼ100%幼少期の家族や環境にもとづくものだと記されています。
私が一番感銘を受けたのは、”心を開いてなかったのだ”と、気づかせるこの先生のメソッド、そしてそれに時間がかからないという事。(例えば30分!もちろんカウンセリングに至るまでの時間は含まれていないけれど)
「そんな~、人なんて簡単に変わらないよ、特に凶悪犯の心なんて、、、」と、思いがちだけど。気づきを引き出すメソッドは、刑務所内でなくとも、日常のなかでも取り入れるべきでは?と強く思えました。
たとえば、もし、自分自身が心を開いていなかったとして、”今までわたしは何十年も開いてなかったんだ”と、認めたい人なんていないでしょう?認めた途端、もれなく過去の人生を全否定したくなるほどの痛みや苦しみが待ってるんですから。
だけど、ここに出てくる受刑者は、その痛みにも増して”これが心を開くということか!!!”と体で感じられた喜びのほうがはるかに上回り、その瞬間からガラリと人生観が変わっていきます。
本当の意味での”更生”ですね。
私自身、”人はなかなか変わらないものだ”と思いがちなので、、、そういうところ、何か自分自身が拓けてないところがあるんでしょうね。。。この先生のメソッドを少しでも参考にしたいと思いました。
で。
・・この本を読んでもうひとつ、書きたかったこと。この本にもある、「幼少期の家族や環境」で、思い出した昔のエピソードが。
・・まだ20代前半の頃、友達が通っていた”学童保育”に一日だけお手伝いにいったことがあるんです。働く親を持つ子供に、代わりにおやつやご飯をふるまって一緒にすごす施設。そこに、超わんぱく&問題児だと言われてるKくん(小学校高学年)が、その日も居ました。
早速その日も、わーー!!わーー!!と騒ぎが起きて。ふっと見てみたら、Kくんがおにぎりを人に投げつけていたんです。わたしの友達はすかさず「なんで食べ物を大事にできないの!!」まわりの子供達はそれ見たことか、という反応でした。
が、、たまたま見てしまったんです。もともとはそのKくんが嫌がらせをされていたからおもわずおにぎりを投げていたことを。・・ちょっと可哀想だな、、と思った私は、こっそり「私、見てたよ。今のはKくんだけが悪いんじゃないよねー」って。
そしたら!!!
そのあとのお散歩タイムのとき、Kくん、私の手をぎゅーーっと握って離さないんです。表情は悲しげに、うつむき黙ったまま、、。
え?どうしちゃったの??私も若かったので、とりあえずそっとそのまま、ずっとお散歩しました。
でも、お迎えの時間が来たとき、その全容が垣間見えたような気がしました。
「K!!帰るわよ!!」と、お母さんの声。「はいっ!!」と、まるで兵隊さんのように手足を揃え、さっそうと歩いてゆくKくん。。。。さっきまでとは別人。。。
どうやら、お母さんはKくんがどうしようもないわんぱく君だって知らない様子でした。家ではなんでも「はい!はい!」って言う事きいてるんでしょうね。。。
もしかしたら、「自分は自分のままで居たいのに、お母さんはいい子でいる僕しか認めてくれないんだよ」っていう気持ちで私の手を握っていたのかな、って、、今なら思えます。。。たぶん、それは間違ってないと思います。
ただ私はお手伝いで一日行っただけなので、Kくんとはそれっきりなんだけど。。。彼ももうすっかり大人の歳です。どんな大人になっているのかな、、非行に走ったりしたのかな。。
子育てって、難しいのでしょう。Kくんも両親のことは大好きなんだと思います。大好きだから兵隊さんのようになってでもついていくのです。はたからは歪んでいると映ったとしても。
もし両親のそういった部分を否定できたら、Kくんは自分も否定できることになるのです。
今回の本にあるテーマもたぶんそこで、Kくんの吐き出すべき(心を開くきっかけになる)本心は、手を握っていたときの悲しい表情にあらわれていたんだと思います。そこを気づかず胸におさめたまま大人になると、親に従って(似て)自分が子供を授かっても、同じようにしつけるパターンが多いそう。
親に似るって、言いますもんね。。
・・この本を読んでふとそんな出来事を思い出しました。。
それぞれがもう少しずつ、自分になにか気づくべき部分がないだろうか?と思える余裕があったら、もう少しずつでも世界のなにかが変わったりするのかもしれないですね。。もちろんもちろん、私も含め。