バニラになる

・・・お盆と正月に、友人ふーちゃんと、いろいろな積もる話をするのが毎年の行事のようになっているんですが、まぁ、幼なじみなんで、じぶんたちの思い出話を酒のさかなにすることもしょっちゅうで。
今日はある約束をしたので、この話をひとつ。
・・・まだ20代半ばのころ、東京の暮らしに慣れない私と、自宅でハンディキャップを持つ子供達対象の洋裁教室をはじめて間もないふーちゃんは、またいつものようにお盆に会ったんです。
「たまには雰囲気だそうか」と、車に乗って多治見の夜景がよく見える高台の住宅地に行き、助手席のわたしだけが赤ワインをプラコップで飲みながら延々と語っていたんです。
(”延々と”とは、たぶん、放っておくと半日でも。一度、互いの自宅で「まぁ、新幹線使って待ち合わせてどっかの飲み屋いくよりは安いね」と、お互い電話口にお酒を用意して、「遠距離飲み会」したことも。そのときは、韓国のりだけで紹興酒(しょうこうしゅ)ロックで飲んでたわたしが3時間後に目がまわってきてそこでお開きになったんですが(笑))
で、その日は、前半わたしがいろいろあった楽しかった事・腑に落ちないこと・などなど語り、その後にふーちゃんが熱く”人間について”語り始めて。
あのころ、お互い、自分のやりたかったことのスタート地点にいたので、いろんな出来事に対する思いが日々積もっていたんでしょうね。

が、しかし・・・

なぜか、いっしょうけんめい耳を傾けているはずの、ふーちゃんの声が、ときどき遠くなるんです。

まずい・・・酔いがまわってきたかも・・・・

でも、いっしょうけんめい、助手席側に見えるきれいな夜景をながめつつ、なんども、うん、うん、とうなづき、彼女のここ何ヶ月間にあった話をかみしめていました。

そして。ついに話が締めくくられ、彼女はわたしの方をむき、
「ね!人間て、そうあるべきだよね!!」

わたしは、えぇもちろん!わたしはいつでもふーちゃんの味方!よくわかるよ、その気持ち!!

という思いを込めて、運転席にいる彼女の方へふり向き、目を見つめて、こう言ったんです。

「うん!あたしはね、バニラ!

(二人)・・・・・

あ、、、やってしまった・・・

そのときの事を、ふーちゃんは、「怒りと笑いが身体の中にこみあげてくる、なんともおかしな感覚だった」と言ってくれていますが・・・

「・・・・帰ろうか・・・」とふーちゃん。

「ごめん・・・いま、目の前にバニラが・・・・ そうね、、帰ろうか・・・ 」

そしてしばらくして二人大爆笑。
おかしいでしょ、何がバニラだって??
落ち着いてから、わたしは彼女に説明しました。
つまり、いっしょうけんめい耳を傾けていたつもりが、なんども夢の中を行ったり来たりしていたようで、まさにふーちゃんが「人間て、そうあるべきだよね!!」と訊いた瞬間、わたしの目の前には、3つのアイスクリームがきれいに並んでいたんです。
そして、それを選ばなきゃ!!ってわたしは真剣に思ったんです。それで、
「うん!わたしはバニラだよ!」って、なにそれ(笑)

それが、どんなだったか、イラストにすると、こんな感じです。伝わりますでしょうか。

Vanilla3_3
真っ暗闇に、スポットライト浴びたアイスクリームが3つ。

この日からわたしたちの間では、「酔ってわけがわからなくなる」ということを「バニラになる」というようになりました。

・・・このイラスト、ペンタブレットで描いたんですが、これが前々から欲しかったので、自分にお年玉ってことで購入したんです。
で、晴れて購入したあかつきには、第一作として「バニラ」を載せるね、って彼女と約束してたんで、、、

果たしてみました
これからも、写真で表現できないものは、たまに描いてみようかと思っています。
・・・みなさまも、くれぐれも、バニラにならないようご注意を(笑)